スレッシュホールド

遠い昔にプログラマーをしていたときのこと、通販サイトを作っていて、商品の在庫数に応じて「残りわずか!」みたいな表示をさせるためにデータベースの商品テーブルに「threshold」という名のカラムを追加したことがある。「threshold(スレッシュホールド)=しきい値」カラムに設定された値よりも商品の在庫数が少なくなったら商品詳細ページにデカデカと「残りわずか!」と表示されるように実装したのだった。しきい値を10なり5なり商品の特性や売れ行きなどの状況に応じて動的に変更できるようにしたのが肝だったような気がする。

自分の部屋の、パソコン机が接する壁にポストカードの類を貼っていて、日々眺めては「美しい…」とうっとりしている。ただ、そうとうに厳選しているつもりでも展覧会に行ったり古書店で昔のポストカードを漁ったりするうちにどうしても増えていき、最初のうちは「余白はまだまだあるからもっと増やせば良い」と鷹揚に構えていたものだけど、最近はふとモニターから顔を上げて見たときに「少し雑然とし過ぎじゃないか?」と感じる瞬間がある。

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ひとつひとつが美しくとも、空間の中にあまりに大量に存在するとノイズが増大してかえって心が圧迫される気がする。じゃあひとつふたつ剥がしてしまえば良いかというとそう単純でもなく、それをしてしまうときっと明日の朝見た時には「なんか物足りないな」と思うであろうことも分かっている。空間の容量に応じてちょうど良いだけの美しいものの分量を見極めること、その難しさを感じている。「何を美しいと感じるか」という選定の部分でブレることはさすがにもうほとんどないように思うけれど、「分量のちょうど良さ」については自分のなかでのしきい値が日々変動するようだ。長期的な好みの変遷という様子ではなくて、気分の浮き沈みや精神的な余裕のあるなしにダイレクトに影響を受けてしきい値が激しく上下している感じがする。

どう対処すれば良いのだろう。究極的には、先の通販サイトよろしくその瞬間のしきい値に応じて展示状況を自動で更新できれば良いのだろうけれどそんなことは難しいし…。こまめに模様替えするしかないのかしら。実はポストカードの取り外しがしやすいようにマスキングテープを使っていたのをコクヨの「ひっつき虫」という弱粘着性のねりけしみたいなものに変えてみたのだけど、これがうちの壁紙とは相性が悪いようで、剥がすときにやすやすと壁紙を破いてもっていってしまうので閉口しているのだ。

むしろ気分を安定させるのを目指す方が手っ取り早いのかも。ちなみに今は「逆に美しいポストカードをもっと増やせば癒し効果が増大して気持ちが落ち着くのでは?」などと思っている。自身の精神を統治することの困難よ。